忘年会・飲み会と労災の境界線について

忘年会・飲み会と労災の境界線について

年末に向けて、社内や取引先との忘年会・懇親会が増える季節です。

しかし、業務外の飲み会であっても「労災」と認定されるケースがあることをご存じでしょうか?今回は、経営者や労務担当者が知っておきたい『忘年会と労災の境界線』について整理します。

1.労災が認められるための基本的な考え方

労災保険が適用されるのは、『業務上の災害』または『通勤災害』にあたる場合です。つまり、業務に起因して発生したケガや病気であることが条件となります。

忘年会などの社内イベントが労災として認められるかどうかは、「業務との関連性」が鍵になります。

2.労災が認められるケース

以下のようなケースでは、労災と認められる可能性があります。

・会社主催であり、参加が事実上義務づけられている場合

・業務の一環として企画・実施された懇親会である場合

・上司の指示で参加したり、会社の費用で開催された場合

例)営業部の「全員参加必須」の忘年会で、部長の挨拶後に発生した転倒事故

  →労災認定の可能性あり

3.労災が認められないケース

逆に、次のような場合は業務との関連性が薄いと判断され、労災と認められにくい傾向にあります。

・有志による自由参加の飲み会

・業務終了後の私的な集まりや二次会・三次会

・社内の行事であっても、業務と無関係なレクリエーション目的の場合

例)仕事後に同僚同士で自主的に行った飲み会でのケガ 

  →原則として労災対象外

4.企業側が注意すべきポイント

・忘年会などを開催する際は、「参加自由」である旨を明確に伝える

・開催案内や議事録に「業務外の懇親目的」であると明記しておく

飲酒によるトラブル(転倒・暴力・セクハラなど)への予防策を徹底する

特に管理職には、『お酒の強要をしない』『深夜の二次会を控える』など、パワハラ

・セクハラ防止の観点からも意識付けが必要です。

5.トラブル発生時の初動対応

忘年会や懇親会の場では、転倒によるケガや急性アルコール中毒、従業員間のトラブルなど、思わぬ事故が発生することがあります。

万が一トラブルが起きた場合、企業として適切な初動対応を取ることは、従業員の安全確保だけでなく、後日の労災判断や会社の責任範囲を明確にするうえでも重要です。

まず、ケガや体調不良が疑われる場合は、速やかに救急搬送の手配や応急処置を行い、状態を記録することが必要です。

救急車を呼ぶか迷う場合でも、周囲の判断に頼らず、危険があると感じた時点で専門機関に連絡することが推奨されます。

また、事故現場の状況(転倒場所、段差、床の状態など)を写真やメモで残しておくことで、後日トラブルの原因確認に役立ちます。

事故後は会社として再発防止策の検討を行うことが求められます。

会場選定や動線の見直し、お酒の強要を防ぐルール作り、幹事役への注意喚起など、企業側が講じられる対策は多くあります。

社内イベントは従業員の交流を深める大切な機会である一方、リスク管理の視点を持って運営することが、安心・安全な職場づくりにつながります。

年末のひとときを安心して迎えるためにも、この機会に社内イベントの位置づけを改めて見直しておきましょう。

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