
裁判例を見てみよう! ~ 第2回 ~
1月27日号のVol.940にてご紹介した、裁判例を見てみようシリーズの第2回です。
今回は、【割増賃金不払いついての判例】についてご紹介します!
基本的な方向性
1.割増賃金請求の場合、要件事実の立証責任は労働者側にありますが、労働者側の証拠が不十分でも、
使用者が労働者の労働時間を適正に把握する責務を果たしていないことが考慮され、タイムカード等
の明確な証拠がない場合であっても、労働者が作成して使用者に提出する書面(出勤簿、業務日誌等)や
個人的な日誌、手帳等によって、一応の立証がされたものとし、使用者側が有効かつ適切な反証を
しなければ、労働者の請求が認容されることがあります。
2.時間外労働手当に代えて一定額を支払うという定額残業制は、労働基準法所定の計算方法による額以上の
金額を支払っていれば、同法37条に違反しませんが、同法所定の計算方法によらない場合は、割増賃金と
して法所定の額が支払われていることを明確にするために、割増賃金相当部分とそれ以外の賃金部分とを
明確に区別することを要します。
法定休日労働の割増賃金相当分、深夜労働の割増賃金相当分についても同じです。
また、定額残業制によってまかなわれる残業時間数等を超えて残業等が行われた場合には、その差額を
別途支払う必要があります。
事案の概要
1.Y社は、従業員Xについて、月15時間の時間外労働に対する割増賃金を基本給に加算して同人の
基本給とするとの合意がされていることを理由にして、午後7時を超えて勤務した場合のみ、
割増賃金を支払ったところ、Xは午後5時から7時までの時間外労働に対する割増賃金の支払いを
求めて提訴したもの。
2.東京地裁の判断は、判示の骨子のとおりであり、東京高裁判決でも是認され、最高裁でも正当として
是認することができるとされた。
判示の骨子
1.割増賃金の計算にあたり、仮に月15時間の時間外労働に対する割増賃金が基本給に含まれるという
合意がなされたとしても、基本給のうち時間外労働手当に当たる部分を明確に区別して合意し、かつ、
労働基準法所定の計算方法による額がその額を上回るときはその差額を当該賃金の支払期に支払う
ことを合意した場合にのみ、その予定時間外労働手当(固定残業手当)分を当該月の時間外労働手当
の全部又は一部とすることができる。
2.Xの基本給が上昇する都度予定割増賃金分が明確に区分されて合意がされた旨の主張立証も、労基
法所定の計算方法による額がその額を上回るときはその差額を当該賃金の支払期に支払うことが
合意されていた旨の主張立証もない本件においては、Y社の主張は採用できない。
よって、Xの時間外労働に対する割増賃金は、基本給の全額及び各手当の額を計算の基礎として時間外
労働の全時間数に対して支払わなければならない。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/index.html)
仮に口頭で「固定残業代も給料に含まれています」と伝えていても、雇用契約書や労働条件通知書・
給与明細上でまとめて表記してしまうと、時間外手当として認められません。
明確に区分し表記することが固定残業(みなし残業)制度を運用する上で大変重要になります。
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