
大きく変わる『年収の壁』
~社会保険はどうなる?所得税はどうなる?~
1. 年収の壁とは?
「年収の壁」とは、一定の年収を超えると税金や社会保険料の負担が発生し、これまで受けられていた控除や扶養が使えなくなる境目を指します。主な影響は以下の通りです。
- 社会保険の扶養から外れる(保険料の自己負担が発生)
- 所得税や住民税がかかる
- 配偶者控除や扶養控除が受けられなくなる
これにより、働き方や家計に大きな影響が出るため、多くの方が「扶養内で働くかどうか」を調整しています。
2. 税金に関する壁
令和7年(2025年)から、基礎控除や給与所得控除の拡充により、税金がかからない年収の上限が引き上げられます。これにより、パート・アルバイトで働く方にとって「働き損」が減り、より柔軟に働ける環境になります。
【改正ポイント】
納税者本人に所得税がかからない年収ライン:103万円→160万円
納税者本人に住民税がかからない年収ライン:100万円→110万円(自治体により非課税基準は若干異なります。令和7年の収入を基に計算する令和8年度分の個人住民税から適用されます。
- 所得税の配偶者控除・扶養控除の対象となる年収ライン:103万円→123万円
- さらに、19歳以上23歳未満の親族(大学生の子など)には「特定親族特別控除」が新設され、要件を満たせば年収188万円までは一定の控除が受けられます
(いずれも給与所得のみの場合。控除を受けるには、所定の要件を満たす必要あり。)
3. 社会保険の年収130万円の壁
社会保険(健康保険・厚生年金)の扶養条件は、原則として「年収130万円未満」とされ、この基準は基本的に据え置かれています。ただし、一部緩和されました。
【改正ポイント】
- 扶養に入ることができる年収ライン:130万円未満→据え置き
(ただし「年収の壁・支援強化パッケージ」の一環として、一時的に収入が増えてしまった場合でも、事業主の証明があれば扶養から外れずに済む仕組みが整えられています。)
19歳以上23歳未満の親族(大学生の子など):130万円未満→150万円未満に緩和
4. 企業が注意すべきポイント
年収の壁の見直しは、従業員の働き方や企業の労務管理にも大きな影響を及ぼします。
- 控除対象範囲の拡大により、令和7年の年末調整では扶養控除申告書などの様式が変更されましたのでご注意ください。
- 令和8年からは源泉徴収の計算方法や税額表も改正されるため、システム対応が必要となります。
- 従業員から「扶養内で働きたい」という相談を受ける際には、税金と社会保険の両面から説明が求められます。
5. まとめ
- 税金の壁は大きく緩和され、所得税は年収160万円まで非課税になります。
- 住民税の壁も110万円まで拡大します。(自治体により非課税基準が若干異なります。令和7年の収入を基に計算する令和8年度分の個人住民税から適用されます。)
- 社会保険の壁(130万円)は据え置きとなりますが、19歳以上23歳未満の親族(大学生の子など)は150万円未満までに緩和されました。
参考:厚生労働省「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」、国税庁「昨年と比べて変わった点(基礎控除の見直し等)」
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