裁判例を見てみよう! ~ 第3回 ~

裁判例を見てみよう! ~ 第3回 ~

最近コスト削減(社会保険料や福利厚生の負担減)や労務管理の簡略化(労働時間管理、有休の付与が不要)を理由に雇用契約より業務委託契約を締結する事例が増えておりますが、契約内容や実態によっては業務委託契約が認められず、労働者と判断され、社会保険の遡及加入や未払い賃金等の支払命令が命じられる可能性があります。

今回は【業務委託でも労働者とされた裁判例 (大阪地裁令和2年9月4日判決)】をご紹介します。

1. 事件の概要

・契約形態:Xさんは会社Yと「業務委託契約」を結び、A社の業務を担当

・報酬:月額基本料(欠勤控除・残業手当あり)

・争点:「業務委託契約」なのか、それとも「実質は労働契約」なのか?

・Xさんの主張:実態は労働者なので、未払賃金を支払ってほしい

2. 裁判所の判断

→ Xさんは労働者にあたると認定し、未払分の支払いを命じた

3. 労働者性が認められた理由

判断ポイント

実際の状況

仕事を断る自由

断れず、仕事を受けざるを得なかった

指揮命令の有無

内容や方法を具体的に指示されていた

想定外業務の有無

通常と異なる業務も命じられた

時間・場所の拘束

勤務時間・場所を指定されていた

代替性

他人に仕事を任せることができなかった

報酬の計算方法

出来高制ではなく時間基準。欠勤控除あり

採用手続

労働者とほぼ同じ採用フロー

経費負担

自己負担の経費はなかった

4. 図解(労働者性の判断イメージ)

以下のような流れで「労働者性」が判断される

 契約書の名前は「業務委託」?

     

 実態は使用従属関係にあるか?(指揮命令・拘束・報酬の性質など)

     

YES ⇒ 労働者として扱われる(保護あり)

NO  ⇒    独立した事業者(保護なし)

5. この判例から学べること

・契約書に「業務委託」と書かれていても、実態が労働に近ければ労働者とされる

・今回は「拘束性」「指揮命令」「時間基準報酬」などから、実質は雇用関係と判断

された

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